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ほら、常連さんがやってきました。
- マリオ:
- いらっしゃいませ。
テーブルには、いつものお酒が置いてあります。
- ジャック:
- 君の予知能力には本当に驚くよ。
マリオは、前回、話をきいた「収益価格」に興味を持ったようです。
- マリオ:
- 収益価格っていうのは、銀行預金と利息の関係に似ていますね。
- ジャック:
- そのとおり。どちらも、いわゆる「元本と果実の関係」が成立している。
| 元本と果実の関係 |
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銀行預金
預金金額 × 利率 = 利息
(元本) (果実)
不動産
収益価格 = 純収益 ÷ 還元利回り
(元本) (果実)
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- ジャック:
- 要するに、利回り(利率、還元利回り)を介して、元本と果実には一定の相関関係があるということさ。なので、純収益と還元利回りを査定できれば、
価格が決まる。
- マリオ:
- 純収益ですか・・・。でも、ホテルの収益分析は不動産鑑定士とは畑違いじゃないですか?
- ジャック:
- そうなんだ。だから、俺は、サブローに任せることにしている。
- マリオ:
- 公認会計士のお友達がいてよかったですね。
- ジャック:
- あいつも、そろそろ来るはずなんだが・・・。
窓の外は灯台の明りに照らされ、白く泡立つ波が、寄せては返し、寄せては返し・・・。

おっと、居眠りをしてしまいました。
- サブロー:
- ・・・そうじゃない。決算書で利益が出ていても、数字は「苦しいよ」とか「助けて」とか語りかけてくる。それを読み解くのが公認会計士の仕事さ。
- マリオ:
- 数字が、お話を・・・するんですか。
- ジャック:
- こいつは、本当に決算書と会話ができるんだ。決算書を見ながらオーナーを問い詰めて、粉飾を次々と暴いていく。このまえは、危うく黒字の決算書を
信じて鑑定評価書を書いちまうところだった。
- マリオ:
- 餅は餅屋ってことですね、旦那。
あっ、そうだ。叔父が「うまい儲け話があるから・・・」って言うんで、会いに行ったら「この会社に投資し
ろ」って言われたんです。決算書と会社概要をもらってきたので、見てもらえますか。
- サブロー:
- 君の叔父さんが経営する会社だね。どれ、決算書では利益が出ているね・・・。
決算書の綴りをパラパラとめくり、損益計算書と貸借対照表を見比べたり、過去の決算書と比較したり・・・。電
卓を取り出し、いくつか数字を打ち込むと。
- サブロー:
- かわいそうに・・・、こんな姿にされちまって。
- ジャック:
- そんなにひどいのか。
- サブロー:
-
ああ・・・。人間に例えると、危篤状態だ。まず、減価償却費が少なすぎる。固定資産のボリュームを考えると・・・、(電卓を叩いて)このぐらいはあるはず
だ。それと、営業債権がこんなに多いのは理解できない。おそらく回収可能性に問題があるだろう。それに・・・。
- ジャック:
- そうか。で、結論は?
- サブロー:
- 残念ながら4、5年前から実態は赤字だよ。このまま行くと、半年と持たないだろう。
- マリオ:
- あのやろう!コケにしやがって。
カウンターの下からライフルを取り出すマリオを見て。
- ジャック:
- はやまるな、マリオ。話を最後まで聞こう。それで、この会社はもうダメなのかい?
- サブロー:
- いや。かなりの荒療治だが、立ち直るための処方箋はある。まず、この規模の会社にしては従業員が多すぎる。数年前に多角化のため大量に採用した
が、どの事業もじり貧だ。不採算事業から直ちに撤退し、本業に経営資源を集中することにより本業を立て直す。気になるのは、多角化した頃から、どういうわ
けか本業の人員も増加している。会社全体がぬるま湯に浸かっているような状態だ。
- ジャック:
- おい、まさか、君は「日本人のように働け」と言う気じゃないだろうな。
- サブロー:
- 冗談じゃない。この国の人間に、それは不可能だ。日本人の半分ぐらい働く人を見つけたらラッキー。まったく、こんな状況で、よくこの国の経済が成
り立っていると思うよ。
- ジャック:
- (小声で)クレイジーなのは日本人の方だと思わないか?マリオ・・・。
- サブロー:
- ・・・それと、直ちに人員を整理して、不採算事業から撤退する。そして、遊休資産を売却して債務を圧縮すれば・・・。ジャック、5番街の地価は、
かなり上昇しているはずだよな。
- ジャック:
- ああ、少なくとも2倍にはなっているだろう。
- サブロー:
- そうすると・・・。よし、なんとか営業キャッシュフローは確保できるはずだ。
- ジャック:
- まるで会社の救世主のような知識と経験を持っているのに・・・、確か、おまえの会社、去年潰れたんだよな。
- サブロー:
- ああ、事業目的が「秘宝探し」っていうのが失敗だった。秘宝が見つからない限り、事業収入が全く入ってこない。

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